技適と認証
技適とは
技術基準適合証明(技適)とは、携帯電話やスマートフォン、タクシー無線、無線LAN等比較的小規模な無線機器に対して適用される、電波法に基づく基準認証制度のことです。
本来、すべての無線局は無線局の免許が必要ですが、小規模の無線局で総務省令で定める「特定無線設備」については、事前に電波法に基づく基準認証を受け、技術基準適合証明を取得すれば、免許手続きを省略できるという特例措置が受けられます。その適用を受けていることを証明するものが、技術基準適合証明すなわち技適ということになります。技術基準への適合を証明する方法は2つあり、一つが技術基準適合証明で、もう一つが工事設計認証です。この二つを合わせて技適とも呼ばれることがあります。
認証とは
技術基準適合証明は、特定無線設備1台1台に実施される審査であり、1台ごとに技術基準に達しているか否かを証明します。つまり現物主義で、希望する無線機すべてに対して検査を行います。しかし実際の試験においては抜き取り検査法により試験を行いますので厳密には全数検査ではありません。
しかし、証明希望台数が多くなれば抜き取り試験台数も増加するので手数料が高額となりますからおのずと証明対象の数には限度があり、少量生産品向けの制度といえます。一方、工事設計認証は、型式(機種や型名など)ごとに審査を行うもので、試験する無線機の数は1台のみです。
しかし、工事設計に関する書類の数が大変多く必要であり厳しい審査がありますので認証取得は技適よりもハードルが高いものとなりますが、製造・販売する無線機の台数には制限が有りません。つまり大量生産向きの制度といえます。
技適と認証の違い
技適(技術基準適合証明)と認証(工事設計認証)は、証明を取得した後の電波法上のメリット(簡易な免許手続きや免許不要等の措置)は同じです。
では何が違うのかといえば、以下の点が異なります。
技適は完成品の無線機を1台ずつ(つまり現物主義)電波法の技術基準に適合しているかどうかの審査・試験をします。(1台ずつ異なる証明番号が付されます。)
一方、認証はその無線設備の設計や製造段階などにおける品質管理等が電波法の技術基準に適合しているかどうか審査・試験を行います。(設計(型式名等)ごとの証明番号になります。)
つまり、手数料の面から言えば少数の製造・販売や評価用の場合は技適を取得するのが有利で、多数の製造・販売の場合は認証を取得するのがよいと言えます。
申込書類の面から言えば認証は書類が多く面倒な面がありますので技適の方が取りやすいと言えます。
試験の面で言うと技適は全数検査が基本ですが実際は抜き取り試験になり、
認証は1台のみの試験となります。
技適と認証の違いを表にするお以下のようになります。
技適と認証の比較表
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技適 |
認証 |
小ロット |
〇 |
X |
大量生産 |
X |
〇 |
書類の数 |
少ない |
多い |
確認方法書 (ISO認定書等) |
不要 |
必要 |
料金 |
小数では安い |
台数に関係なく定額 |
試験 |
抜き取り |
1台のみ |
証明 |
1台毎 |
1型式のみ |
TELEC認証とは
TELEC認証とは登録証明機関である一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター(TELEC)が行う技適証明又は工事設計の認証の一般的な呼称を言いますが、現在はTELECは16社ある登録証明機関のうちのひとつにすぎないため、他の登録証明機関の証明に対してはTELEC認証というのは本来、正しくありません。
しかし、世間一般にこの呼称で馴染んでしまったために技適または認証の取得を「TELEC認証」あるいは単に「テレックを取る」などと呼ばれたりしています。
登録証明機関の種類
現在、以下の16社が登録証明機関として登録を受け、業務を実施しています。
登録証明機関の区別 | 登録証明機関名 | 事業の区分 | 連絡先等 |
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001 | 一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
東京都品川区八潮5‐7‐2
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002 | 一般財団法人日本アマチュア無線振興協会 | 電波法第38条の2の2第1項第3号の事業 |
東京都豊島区巣鴨3‐36‐6
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003 | 株式会社ディーエスピーリサーチ |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
兵庫県神戸市中央区港島南町1-4-3
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005 | テュフ・ラインランド・ジャパン株式会社 |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
神奈川県横浜市都筑区北山田4-25-2
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006 | SGSジャパン株式会社 |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
神奈川県横浜市都筑区北山田3丁目5番23号
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007 | 株式会社UL Japan |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
三重県伊勢市朝熊町4383番326
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008 | 株式会社コスモス・コーポレイション |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
三重県度会郡度会町大野木3571番地2
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011 | テュフズードジャパン株式会社 |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
山形県米沢市八幡原5-4149-7
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012 | インターテック ジャパン株式会社 |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
東京都港区虎ノ門4丁目3番13号 ヒューリック神谷町ビル4階
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013 | 一般財団法人日本品質保証機構 |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
東京都八王子市南大沢4-4-4
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017 | 一般財団法人電気安全環境研究所 |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
東京都渋谷区代々木5丁目14番12号
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018 | 株式会社認証技術支援センター |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
神奈川県横浜市港北区岸根町610番1
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020 | 一般社団法人TAC |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
大阪府大阪市旭区高殿2丁目5番2号
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021 | 一般財団法人電気通信端末機器審査協会 |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
東京都港区元赤坂一丁目1番5号 富士陰ビル5階
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022 | ビューローベリタスジャパン株式会社 |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎東4-5-17
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023 | DEKRAサーティフィケーション・ジャパン株式会社 |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
神奈川県横浜市保土ヶ谷区神戸町134 横浜ビジネスパーク ウエストタワー7階
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MRA(登録外国適合性評価機関)
無線設備の基準認証に関する相互承認協定を我が国と締結した国の機関であって、技術基準適合証明を行う者として協定に基づき設置された合同委員会の登録を受けたものをいいます。
本邦登録証明機関の登録の基準と同等基準を満たす必要があり、登録外国適合性評価機関がこの基準を満たすことを相手国の政府は責任をもって確保することとなっています。 現在、以下の17社が登録外国適合性評価機関として登録を受け、業務を実施しています。
登録外国適合性評価機関の区別 | 登録外国適合性評価機関名 | 事業の区分 | 連絡先 |
---|---|---|---|
201 | Kiwa Nederland B.V. |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
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202 | cetecom advanced GmbH |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
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203 | TUV SUD BABT |
電波法第38条の2の2第1項第1号の事業 (対象:免許不要局に係る特定無線設備) |
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204 | Phoenix Testlab GmbH |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
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205 | Element Materials Technology Warwick Ltd. |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
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207 | BV LCIE |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
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208 | Bureau Veritas Consumer Products Services, Inc. |
電波法第38条の2の2第1項第1号の事業 (対象:免許不要局に係る特定無線設備) |
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209 | ACB,Inc |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
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210 | MiCOM Labs |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
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211 | Bay Area Compliance Laboratories Corp |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
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214 | Eurofins Electrical and Electronic Testing NA, Inc. |
電波法第38条の2の2第1項第1号の事業 (対象:免許不要局に係る特定無線設備) |
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216 | Vista Laboratories, Inc. | 電波法第38条の2の2第1項のすべての事業(対象:すべての特定無線設備) |
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217 | Timco Engineering, Inc. | 電波法第38条の2の2第1項のすべての事業(対象:すべての特定無線設備) |
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218 | Nemko North America, Inc. | 電波法第38条の2の2第1項のすべての事業(対象:すべての特定無線設備) |
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219 | KL-Certification GmbH | 電波法第38条の2の2第1項のすべての事業(対象:すべての特定無線設備) |
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220 | LGAI Technological Center, S.A. (APPLUS) | 電波法第38条の2の2第1項第1号の事業(対象:免許不要局に係る特定無線設備) |
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221 | SGS North America Inc. |
電波法第38条の2の2第1項のすべての事業 (対象:すべての特定無線設備) |
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表示
下図に技適の場合と認証の場合の表示を示します。どちらもいわゆる技適マークと呼ばれる表示です。一見違いがわかりにくいですが、両者の違いは番号の表示方法です。技適番号は無線設備ごとに付与される固有番号ですが、認証番号はその型式に対して付与されるものです。最初の3桁の数字は登録証明機関番号を表します。その後にハイフンがある場合を認証と覚えておけば技適か認証かがすぐわかります。
技適マークの直径は3mm以上の大きさが必要です。
認証取扱業者とは
認証を取った者は「認証取扱業者」と呼ばれ法的に権利と責任が発生します。
認証取扱業者の権利
認証取扱業者だけが、認証マークの表示を行うことが可能です。つまり認証取扱業者の権利ということになります。
また、既認証無線設備に変更が生じた場合に変更の工事が行えるのも唯一その認証取扱業者のみになります。認証取扱業者以外の者はいかなる表示も変更の工事も行うことはできません。
認証取扱業者の責任
認証取扱業者は「技術基準合致義務」があります。無線設備として製造し続ける限りいつのロットでも同一の性能を担保する義務があります。
1. 工事設計の合致義務について
工事設計の合致義務等は、電波法第38条の25の第1項により、「登録証明機関による工事設計認証を受けた者(以下「認証取扱業者」という。)は、当該工事設計認証に係る工事設計(以下「認証工事設計」という。)に基づく特定無線設備を取り扱う場合においては、当該特定無線設備を当該認証工事設計に合致するようにしなければならない。」と規定されています。
また、第2項では、「認証取扱業者は、工事設計認証に係る確認の方法に従い、その取扱いに係る前項の特定無線設備について検査を行い、総務省令で定めるところにより、その検査記録を作成し、これを保存しなければならない。」と規定されています。
検査記録に記載すべき事項は、特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則(以下、「証明規則」という)
第19条の規定により、次のとおりとなります。
一 検査に係る工事設計認証番号
二 検査を行つた年月日及び場所
三 検査を行つた責任者の氏名
四 検査を行つた特定無線設備の数量
五 検査の方法
六 検査の結果
更に、検査記録は、検査の日から10年間保存することが義務づけられています。又、検査記録の保存には、電磁的記録に係る記録媒体で行うことができますが、この場合、電子計算機等を用いて直ちに表示することのできる状態である必要があると規定されています。
表示は、電波法第38条の26の規定により、「認証取扱業者は、認証工事設計に基づく特定無線設備について、前条第二項の規定による義務を履行したときは、当該特定無線設備に「総務省令で定める表示を付することができる。」と規定されています。
また、前条(電波法第38条の25)第2項の規定に違反したときは、電波法第38条の28第2項の規定により、表示を付することを禁止される場合があります。
なお、表示は、証明規則第20条により、総務省令で定める様式(証明規則様式第7号)のものを特定無線設備の見やすい箇所に付さなければならないと規定しています。
総務大臣は、技術基準適合証明に係る無線設備であって表示が付されているものが、電波法第三章の定める技術基準に適合しておらず、かつ、その無線設備の使用により他の無線局の運用を阻害するような混信その他の妨害又は人体への危害を与える恐れがあると認める場合において、妨害又は危害の拡大を防止するために特に必要があると認めるときは、技術基準適合証明を受けた者に対し、その無線設備による妨害又は危害の拡大を防止するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができます。
また、1億円以下の罰金刑の法人重課があります。
技術基準適合証明に係る表示が付されている無線設備が電波法第三章に定める技術基準に適合していない場合において、総務大臣が他の無線局の運用を阻害するような混信その他妨害又は人体への危害の発生を防止するため特に必要があるとみとめるときは、その無線設備は、適合証明無線設備としての表示が付されていないものとみなす処分を行うことができます。
総務大臣は、認証取扱業者が工事設計の合致義務(電波法第38条の25第1項)の規定に違反していると認める場合には、認証取扱業者に対して、工事設計の認証に係る確認の方法を改善するために必要な措置をとるべきことを命じることができます。
電波法第17条第6項の規定により、「法第三十八条の二十五第一項の認証取扱業者(以下「認証取扱業者」という。)は、認証工事設計に基づく特定無線設備について検査を最後に行つた日から起算して十年を経過するまでの間、第四項第一号又は第三号に掲げる事項に変更があつたときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した様式第六号の届出書を総務大臣に提出しなければならない。ただし、当該特定無線設備の取扱いを終了しているときは、この限りでない。
一 変更した事項
二 変更した年月日
三 変更の理由」
と規定されています。
総務省令で定める表示とは: 以下の技適マークのことです。